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感想 作品集123 『死んだ彼女がもう笑った』 鹿路さん

 一気にまとめてでは無く、ひとつひとつちまちま語っていく姿勢。今回の作品はこちら
 リンクを貼って良くなっただなんて本当に昔から気付いていたよ!
 怠惰! この怠惰の虫が! すみません過去分の感想にもいつの日かリンクを貼っつけたりします

 はい。そそわにおいて大好きかつ素敵な作家さんのひとり。以前この黒歴史場で感想を残させていただいたのが『御日様のあまい蜜(無印作品集78)』でした。78……一体どれほどの時が流れて……言葉の海はまことに膨大。

 例の如く、というか随分と久方ぶりではありますけれど。こちらは私が残す単純な感想です。留意はしますが、物語の内容に触れる部分もあります。未読の方はご注意ください。

 それでは、参りましょう。


 *


 さてもさてもと酒の宴、酔気や巡らん其処かしこ。酔うは人。あるいは人にあらざるもの。
 例えば亡霊。往くあてのないもの。普段の腹ぺこが起こす動きは、酔いて相変わらずの。
 例えば閻魔。魂を裁くもの。普段の堅物が零す言葉は、またしても相変わらずの。
 例えば妖怪。その字(あざな)の頭に大の字をつけて呼ばれるもの。普段の胡散臭さが醸す雰囲気は、ますます一層強くなり。

 例えば覚り。心を読むもの。普段は揃わぬ筈の面子が揃った宴の場にて。そのまなこに流れ込むは面妖なる他者の心。

 「普段は揃わぬ筈の」。
 そんな宴が眼の前に。

 何の為?
 何の為に?

 さてもさてもと酒の宴。酔気は普段の有様を、やわやわとしたものに変えてしまう。
 風車が起こす風のよに、くるくるゆるく混ぜ込むのです。
 幽かな違和を、紛れさせてしまう程に。


 * *




 どうしようかって、いきなり説明に困るという醜態を晒します。己の場合が書くときも読むときも素面であることがあんまり無いものですから、宴会が背景に据えられているとそれだけで愉しくなります。
 場面のひとつひとつが、物語として素敵です。非常に多くのキャラクタが登場していて、その顕し方が素晴らしい。完全なる一人称では無く、それでいて折々に挟まれる心情がするりと溶け込んでいるという。

 冒頭は、幽々子さまによるいつも通りの奇行から。タイトルが「死んだ彼女~~」だったので、その後の展開に期待しつつも違和なく引き込まれていったのですが。タグのトップに躍り出ているさとり様の心の動きようがなんとも魅力的です。


 *

 皮膚一枚の下に深海のような感情があるのなら、表の笑顔も柔和な言葉も価値はない。かつてさとりは、そう思っていた。

 (本文より引用)

 *

 さらりとこんな文章が挟み込まれる。直喩の使い方って、それを使う本人がどれだけのことを見て、想って、言葉に置き換えてきたのかの積み重ねなのやもしれない。そんなことを考えたりします。多用されすぎると読み手としては若干疲れるかもしれませんが。この言葉の変換率は本当に羨ましいです。

 宴の席は続き。様々な面子と会話していくさとり様。表のやりとりだけではなく、彼女は他者の心が読める……面子的に読ませてくれない方々も多かったですが!

 心に結界張られた挙句それがパスワード式でしかもそれが二秒に一度ランダムで文字列が入れ替わる仕組みになってるとか。
 「ぱりやーっ!」とか。
 すみませんこの部分だけ書いても訳が判らない。けれどこの「ばりやーっ!」は大変素晴らしい。のですよ。

 ただ、さとり様が本気で読もうと思ったら読めたのかもしれません。物語の終着を見届けた今となっては、彼女がこの物語のもうひとりの主人公だったのかもしれないな、と思います。


 *

 半霊を曳いて川原へ下りていく妖夢を目で追って、紫は肘掛けによりかかって、長く柔らかなため息を吐いた。
「そうね。違うとしたら、妖怪はけっして自殺しない。自ら命を絶った妖怪の話なんて、きいたことがありますか」
 質問ではなく、それは独り言のようにさとりには聞こえた。

 (本文より引用)

 *


 作品タイトルがあっただけに、妙に印象に残った一文。
 ”妖怪はけっして自殺しない”。
 そういえば……うぅむ、成る程と。自らが持っていた観点とは違う考えを明示された気分で、新鮮な印象でした。妖怪にとって、喰ったり喰われたり、とち殺したり殺されたりという生々しい縮図は想像に難くなかったのですが。何処か己の中では「自らいのちを絶つ」という心の動きも在り得るのかもしれないと、漠として考えていたのです。それは今も変わらぬままですが、思わず「おぉ」と声を漏らしてしまいました。


 そして、亡霊嬢。幽々子さま。

 *


 手のひらに拾ったそれは確かに桜だった。花をつけた桜などないはずなのに、と顔をあげたさとりはあっけにとられる。
 一面、桜吹雪だった。桃色の鱗の小魚の、ものすごい数の群れに取り巻かれているかのようだった。どれだけ散らしても尽きることのない、夥しい花をつけた枝が網の目のように空を覆っている。
 彼女は、そこに居た。見開かれた目はふたたび閉じることはない。花びらは滾々と、まるで瞳から湧き出てくるかのようだった。
 無限に尽きることのない井戸のように。

 (本文より引用)

 *


 唸った。唸ってしまった。なんなのだろう、この描写は確かに幽々子さまのことで、桜は勿論印象的で、けれど、これは。瀟洒な、は少し違って。幽玄優美、と一言で済ませたくも無い。
 幽々子さまが描写される作品だと、twinさんの『乱れ咲き(作品集76)』が物凄く好きなのですが(長めですが、是非ともオススメしたいです!)、あの方の重厚さとも趣を異とする。
 個人として敵わないなァ、と思うのはこういった言葉の繋ぎ方です。酒の場の雰囲気も相まって、何処かふわふわしているのですけれど。それとなく鋭利で、切られた痛みに気付けないような何かを孕んでいる。ああもう
 この物語において、登場する回数こそ多くはないというのに。「幽々子」というキャラクタ自体が既に素晴らしいのもありますが、殊更に映えている印象。

 そしてこの物語の、真の主人公とは。この面妖な「宴会」とは何のためのものであったか。
 もし興味を抱かれたなら。それはみなさまの眼で確かめていただければ。構成の妙も然ることながら、Rate14.19(2010/9/17 2:30現在)は伊達じゃないです。最後の場面でもう「あぁ」とか何か声にならない声とか漏らしてました。

 死んだ彼女が。もう、笑っていたのです。
 是非ともご一読を。




-------------


 感想になってるのか判りませんが、先ずはこのようなかたちで。長々とお付き合い頂いた方々へ、ありがとうございました。興味を持っていただけたなら幸いです。
 これでひとつ! まだ感想を書きたい作品は残っています。それが今週中に出来るかは正直むつかしいですが

 己も頑張ろうと。有体の思考を連ねつつ、おやすみなさい。


-Julian Casablancas 『Out Of The Blue』

2010.09.17 02:39 | | コメント(0) |

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