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断片のメモ_独白する彼女の記憶(5)『かえれない海』




「ざぁ、ざぁ、ざぁ。


『糸。糸で繋がっていました』


 かつてあなたはそこにうずくまり、なにものにもおかされない海の中に居ました。
 ひたり、眼を閉じて。ゆらり、浮かんでみたのでしょう。そこから離れゆらゆらと。
 ざぁ、ざぁ、ざぁ。そのまま海を這い出たとき、多分そんな音が鳴りました。


『欠片。欠片を握り締めていました』


 今はもう、そこにかえれないとあなたは言います。
 かえれない、とあなたは言います。


『覚えていますか? あなたと海を繋ぐ糸を切ったのは、あなたではなかった。あなたは海の中で硝子のように輝く欠片を持っていて、けれどその使い途を知らないと言ったのです。

 あなたがそこに居るのをやめた日、あなたの海はしにました。あなたは今も、欠片の使い途を知らないまま。さざなみの音がなつかしい、と呟くばかりですけれど』


 あなたはただ、海を這い出た。
 思うために。ただひとつ、思うために。


『さざなみの音がなつかしい、と』


 もう、かえれません。
 もう、あの日の海にかえれません。


『覚えていますか? あなたは欠片を握り締めたまま、それをどうしようかと考えているようでした』
『あの日からずっと』
『ずっと、ずっと』
『さざなみの音が』
『なつかしい、と』


 ざぁ、ざぁ。
 ざぁ、ざぁ、ざぁ」



-Syrup16g 『Reborn』



 050204と記録されている詩作ノートより

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2010.02.04 01:50 | | コメント(0) |

断片のメモ_独白する彼女の記憶(4)

 

「午前二時には、透明な雨が降るでしょう。
 その最中に居る君は溶けていくのでした。静かに落ちる水のようなものだけが見えます。

 だから、遠い日の空気が澄んでいたことだとか、部屋を照らす電球の淡い光が持っていた温かさだとか、茎だけ残ってしまったかつて花と呼ばれていたものの姿だとか、その姿を映す硝子窓に混ざるくらい波だとか、空気の向うに星がたくさん見えていただとか、空が、どこまでも高くあったとか。

 そんなものはもう、溶けて無くなってしまいます。
 本当にこれで、よかったのですか?



 *



 午前一時には、透明な糸が満ちるでしょう。
 糸に絡めとられてしまった君は、もう動くことが出来ないのでした。ひんやりとした音だけが聴こえます。

 昼白色の灯りは夜を引き裂いたりしなくて、やわらかくその場のものを包み込むだけです。窓の外はきっとつめたく、寒ければ寒いほど星はよく輝くのかもしれないと思いました。段々と空に雲がかかったとしても、部屋の明るさは無くなりません。ぼんやりと曖昧なひかりは無くなりません。でも、僅かに屈折して歪んでいます。

 ぽとり、と音が鳴ります。エビネの花が、その首を落としてしまう音です。
 窓の外に君は居ます。部屋の中に私は居ます。私は多分、外に出たいのだと思います。



 *



 午前零時には、透明な花が咲くでしょう。
 鮮やかな色をつけたエビネの花びらに君は手を触れているのでした。その花の香りは部屋の中に届きません。

 透明な花が咲くことを伝えたのは、君でした。私は触れたかったのだと思います。今まさに、触れたかったのだと思います。硝子の窓を薬指でつぃとなぞって、その指をくちびるにあてがいます。きれいな夜の一部が、からだの中に入り込みます。僅かな夜色が、私の空白に混ざって少しばかり渦を巻きます。

 なんとなくわかってしまいました。それを話すべきか迷います。けれどもう、透明な花は咲き乱れていて、もう見えていた。きっとここから、静かに歪み始めるのでしょう。


 君もいずれ、気付くのかもしれないけれど」



-mouse on the keys 『最後の晩餐』



 ピアノの音が響きます
 ねむりましょう


2009.11.29 01:51 | | コメント(0) |

断片のメモ_独白する彼女の記憶(3)



「私は、伝えなかったのです。


 はだしで歩くと音がやわらかくなる、なんてことを呟いていたけれど、私は特に何も返さなかったのだと思います。ぺたりぺたりと足音だけを残し、そこに跡が刻まれたかどうかを確かめることはしませんでした。

 私はそれにひっそりとついていくだけだったのです。

 私たちの探し物は何だったかな、なんてことを言おうとしたけれど、特に何も変わらないのだろうと思いました。あなたはふと歩くのをやめて、何となくひんやりつめたい床に腰を下ろして、それが次第に熱を帯びていくことなど無いと知っていました。私は、あなたは、私たちは、あまりにつめたすぎたのです。

 夜はとても静かで、たった今居る長い長い廊下の先に、大きな窓がひっそりと佇んでいることに気付いていました。そこからぼんやりとしたひかりのようなものが零れているのも感じました。この廊下は全て繋がっているから、わかってしまいます。

 その時、私だけに見えているものがありました。この長い長い廊下のなめらかな床に、大きな窓の影が落ちていたのです。あなたがそれを確かめようと思ったかどうかはわかりません。けれどまた立ち上がって、とてもゆるやかな足取りで、あなたは先へと進みました。

 私はそれにひっそりとついていくだけだったのです。


 ゆかにうつる、ゆかにうつる。
 窓うつる、窓のうつる。
 ぺたりぺたりと。また音が響きます。
 確かめなくても、足跡は残りません。


 暫く経って、あなたは廊下の果てに辿り着いてしまいました。あなたの眼の前にあった筈の窓、それがあなたの探し物であったかどうかはわかりません。けれどその窓から出たとき、あなたはやはりはだしのままで歩き続けるのだろうかと。そんなことだけが気になったのだと思います。

 そこであなたは座り込んだのです。
 そして、床にうつる窓がひらいたら素敵なことだ、とまた呟くのでした。

 つめたい床にひたりと両の手を合わせて、あなたはぼんやりと大きな窓の影を見つめていました。
 私はそんなあなたの有様を見つめていました。

 こうして、あなたが開くべき窓は。あなたからとても遠いものになりました。あなたが私と眼を合わせている、それだけで私にはわかってしまった。


 それを私は、伝えられなかったのです」






-Condor 44 『visionary town』



 わーいはやく帰ってこれたよ
 上記は先日病院でさらさら書いてたもの
 病院の床質ってなんとなく好みです
 こういうのたまに書かないと脳がもやもやしてきます

2009.10.26 23:19 | | コメント(2) |

曖昧さ加減

「宙白色?」

 普段振り返らない過去の文章を見返してみると、なんとも胡乱な単語が眼についたのでした。昼白色って書きたかった筈なのに。ああでもなんか字面が良いから修正しないでそのままにしておこう。私に必要なのは己の過ちを素直に認めることだと思いますが気にしません。

 以下、胡乱な単語から思いついた文章を書き連ねるに至ります。
 現在0:50。




* * *


続きを読む

2009.09.02 01:51 | | コメント(0) | トラックバック(0) |

断片のメモ_独白する彼女の記憶(2)

「たぶん、きっと。ただ、そういう言葉でした。

 私たちに必要だったのは見上げることで、静かな息をしながら、ひっそりと螺旋の階段を登り続けます。身体を、置いておく場所が無かったのです。都合の良い部屋は何処まで登っても見つからないけど、きっと登り続ければそれがあるのだろうって、私たちは考えていました。

 泳いでいければいいのに、なんてぽつりとあなたは零すのですが、足場の無い場所に身を置くことが出来ないのは当然のことでした。私はただ、こくりと頷いて返します。あなたは笑いました。そしてまた足を踏みしめながら登るのです。言いたいことをそのまま言葉にして、表情を作るのはあなたの役割でしたから。


 銀色の、河、


 螺旋の外側を覆うのは古びた灰色の壁ばかりでしたが、たまにぽっかりと窓のようなものが開いています。そこから顔を出して見下ろせば、河が流れていました。あんまり綺麗な表面なので、あんまり長く眺めてはいけないとあなたは言いました。


(あ、ほら今、一匹、黒斑点の模様をした蝶が水面に近づいて、そのまま吸い込まれるようにして消えてしまった。その際水面に描かれた真っ直ぐな軌跡は、さながら銀の尾がごとく、――)


 ――眺めてはいけない、と、言いました。


 十分であったのです。
 河の流れは穏やかにありましたし、何よりあの水面、蝶がすぃと水に含まれていったときに、水面に引かれた銀の尾を、私は確かに見たのですから。


 私には、十分であったのです。
 けれど、あなたは魅せられた。


 登ることをやめる兆しに、本当は気付いていたのだと思います。この場所から、あなたはひとりで、その足で踏みしめながら降りていくだろうということも、なんとなく。ああ、でも、これが正しいことなのかもしれない。私はもう上に登らなくてもよくなって、この場に棲み続ける。もう、足が動かないから。上を見ないのなら、私は窓から顔を出して、ずっと河の流れを見つめていてもよい。いつかあなたは、あの銀の尾を引いて河に呑まれる様子を、みせるでしょうか。それとも。


『たぶん、きっと、きれいだ』


 そんな文字が、やたら綺麗な筆致で紙切れにのこされていました。あんまりなことだったので、思わず笑いそうになりました。そうやって、たぶん、きっと、なるほどそうかもしれないと、また思うことにしたのです。紙切れをくしゃくしゃに丸めて、窓の外へ放り投げます。何処かに引っかからなければ、それは正しく河に呑み込まれるでしょう。

 新しい紙切れと、鉛筆を取り出します。
 たぶん、きっと、そうだねと。呟いてから、それを紙切れに記すことにしました」







‐Mono 『16.12』


 断片からひとつの景色を また練習
 頭痺れてきた
 酒が 呑み たい

2009.07.03 00:08 | | コメント(0) | トラックバック(0) |

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プロフィール

いこの

Author:いこの
たんたんとお酒をいただきながらssを書いている私の脳がじわじわアルコールやニコチンにやられていく様を観察できます
次また前触れなく長期に渡って休んだらぶっ倒れたんだなと把握してください


カテゴリせつめい

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